視聴覚室

「あんな篠崎、放っておけねーし。みんなも誰かが犠牲になればそれでいい、みたいな雰囲気になってて、ちょっと腹立ったんだよ俺。

だから後片付けを済ませて、俺も篠崎追って視聴覚室まで向かったんだけど……」


 高志先輩が南階段を上がって二階に辿り着いた瞬間、洋子の叫び声が聞こえた。

 北側突き当りの廊下から、無我夢中で走ってくる洋子が見えた。


「篠崎って声かけても全く気付かなかったみたいでさ。とにかく泣き叫びながら走ってきて、階段駆け下りてったんだ。

俺、気になって廊下の先を見たんだけど、特に何も見えなかった。篠崎、何があったんだろうな……」


 やっぱり。洋子は視聴覚室へ行く道すがら、もしくは視聴覚室の前で私に電話をかけてきたんだ。

 何があったの? 何を伝えたくて電話をしてきたの……?


 遠くから、トランペットの音が聞こえてきた。そろそろ部活が始まるのだ。

 気が付けば体育館からもボールの弾む音や話し声が聞こえてきた。運動場からは野球部のかけ声が飛んでくる。


「……先輩。私、ちょっと遅刻します。今から篠崎さんのところへ行ってみたいんです」

 高志先輩はいつもの優しい笑顔に戻っていた。

「ああ、こっちのことは任せておけ。よろしく頼むよ」