視聴覚室

 いつも快活で笑ってばかりいる先輩が、珍しく静かだった。

 しかもこの様子からして、私が来るのを正門で待っていたのではと気が付いたときには、変に先輩を意識して歩き方がぎこちなくなってしまった。


 ちょっと話がある、と言って連れて行かれる先が体育館裏。

 これは……これはもしかしてのシチュエーションでは? なんて少女漫画で育った私はどうしようもなく胸が高鳴ってくる。


 人目を避けるように木陰までやってくると、高志先輩が辺りを見回してから口を開いた。


「単刀直入に聞くけど、安原。おまえさ、前に視聴覚室に行こうとしてたよな? 俺、行くなって言ったけど、もしかして行ったのか?」


 どきりとした。思いがけない質問に動揺が隠せなかった。

 それを高志先輩が見逃すはずもなく。


「……行ったんだな。そうか……」


 落胆したような、呆れたようなため息と表情。

 瞬間、胸の奥がズキリと痛み、喉がきゅっと締め付けられた。

 だから、すぐには何も言い出せなかった。


「昨日、おまえが早退した後な、ちょっと色々あったんだ」