視聴覚室

 通話ボタンに指を添えて、一分ほど悩んだ。

 こんな朝早くに電話をかけるのも非常識だし、あと数時間もすれば学校で会うことになる。


 うーんと考えた挙句、やっぱり学校で直接会って聞くことにした。

 ひとまず電話に出られなかった旨をメールで謝り、また後でねと締めくくる。


 結局、私が家を出る七時過ぎまで洋子からの返信はなかった。





 いつもより早く学校に着くと、正門のところに一人の人影が見えた。

 それはよく見知った人物で――

「高志先輩?」


 自転車の速度を緩めて、先輩の手前でブレーキをかける。

 部活開始までまだ三十分以上はあるから、何か買い出しにでも行くところなのだろうか。


「……安原、良かった。今日は早かったんだな。もう大丈夫か?」

「あ、はい。ご迷惑おかけしました」


 頭を下げると、それなら良かったと安堵した言葉が降ってきた。

 心なしか元気がない。

 どうしたんですかと訊ねるより早く、先輩が私の自転車の前かごをひく。

 正門入ってすぐ左側にある体育館に視線を移し、「ちょっと話があるんだ」と誘導するように歩き出した。

 私は慌てて自転車を押しながらついていった。