視聴覚室

「制服着てたのは確かなんだ。長い黒髪の女子だった。だからうちの生徒なんだろうけど……おかしいの。

ちゃんと廊下に出て確認したら、私が使ってる教室以外は扉も窓も全部閉まってたの」


 その「誰か」は、ある教室へと入っていったらしい。

 扉の開閉音は聞こえなかったので、てっきりその教室は扉が開いているのかとメグミは思っていた。

 だが、開いた形跡も人の気配すらも皆無だったのだ。


「ちなみにメグミ、その教室って……」


 自然と声がうわずっている自分に気付く。

 嫌な予感が頭をよぎり、息をすることが苦しくなるほど鼓動がどんどん早くなる。


 メグミはうん、と意味深長に頷くと、私たちの顔を順に見つめていって口を開いた。



「……視聴覚室」



 その言葉に、カーテンレールに絡まった髪の毛が、受話口からのノイズ音が、窓ガラスに張り付く真っ白な手のひらが記憶の奥底から瞬時に呼び起こされた。それも鮮明に。



 気分が悪くなった私は、その場で突っ伏し崩れ落ちた。驚いたみんなが私を抱き起こす。


 人を呼ぶ声、慌てて駆けつける足音が聞こえ、見上げると江口先生や、高志先輩。他にも何人かが私を心配そうに覗き込んで何かを言っていた。



 結局私は親に連絡がいき、そのまま部活を早退することになった。