音楽室に着くと、もうすでに商業科の生徒がぱらぱらとやって来ていた。

 二年と三年はまだテストがあるようで、私と同じ一年生しかいない。



「理香、お疲れ! 二組は最終どの先生が来たの?」


 リードを片手に近寄ってきたのは、一組の洋子。

 中学から続けているクラリネットは一年とは思えないほどの腕前で、先輩たちの間でも一目置かれていた。



「えっとね、体育の南先生」

「えーっ! じゃあ嫌ってほど教室内をウロウロされたんじゃない?」

 けたけたと洋子は笑った。

 私も乗っかって「逆に集中出来ないって話よね」と肩をすくめつつ呆れ顔を作る。



「あ、そうだ。江口先生がさっき来て、手が空いてる人がいたら職員室に来てほしいって」

「なんで私にそんなこと言うの?」と鞄を肩から下ろしつつ問う。


 わかってて聞く私もイジワルなんだけれど。

 洋子は歯を見せて笑った。



「だって理香、パーカッションってもう楽器は出てるし、自主練したくても音出ちゃうから出来ないでしょ? 譜面読みだって……ねぇ?」