プルルル……プルルル……
♪♪♪……♪♪♪……
コール音と共に、すぐ足元から曲が流れ出した。
てっきり奥の方に置き忘れたのだとばかり思っていた私たちは、顔を見合わせて驚いた。
洋子の携帯は入口から入ってすぐ、段ボールの陰に転がっていた。
「ねぇ……さっきはもっと、音小さかったよね……?」
「うん……いや、でもあれかも。扉隔ててだったから小さく聞こえたのかもしれないし……」
これ以上余計なことは考えたくない。
どこか腑に落ちないけれど、今はどうでもいいことだ。
また変なことにならないよう、私は急いで電話を切った。
洋子の目にも携帯が落ちている場所は見えていたはずだから、問題ないだろう。
「見つかったのか? 安原、電気消して出てこいよ」
そう言って踵を返そうとしたものだから、「ひゃーっ! 先生、待ってくださいー!」と泣きの入った叫び声が出た。
「アホか。鍵をかけないかんだろうが、ここにおるわい。さっさと出てこい」
私が電気のスイッチに指を添えた時、洋子の異変に気がついた。
そういえば、携帯を拾おうとしゃがみ込んだまま動かない。
「……洋子?」
「……やばい。やばいって絶対。この携帯見てよ、理香……」