視聴覚室

 二人でわんわん泣きながら職員室に転がり込むと、まだ残っていた先生たちが驚いた様子で集まってきた。


 一部始終を話して聞かせると、そんなわけないだろうと笑われて終わり。

 肝心の江口先生に至っては、

「あぁ、何でも奥さんが破水したとかで、慌てて帰っちゃったわよ」


 体育の南先生がにこやかに笑う。

 おめでたい話なんだろうけど、私たちにとっては「裏切り者!」と叫びたい心境だった。




「さっさと見つけて、さっさと帰れよ。ワシだって早く帰りたいんだからな」


 帰り支度をしていた担任の谷先生に泣きついた私は、どうにかこうにか説得して視聴覚室までついてきてもらった。今度はちゃんと鍵も持参している。


「大体、生徒は入っちゃいかんことになっとるだろが」

「江口先生にゆってくださーい」と冷たく言い放つ洋子。これは明日まで引きずりそうだ。


 谷先生は何の迷いもなく視聴覚室の前で立ち止まると、ぶっきらぼうに鍵を差し込んだ。


 先生の背中越しから、私と洋子は先ほど手が張り付いていた窓を覗く。


 ほっと吐息がもれた。あの白い手のひらはもう消えていたから。