視聴覚室

「駄目だ駄目だ。今夜は職員室、生徒は立ち入り禁止だぞ。採点中の答案があるんだからな」

「じゃあ音楽室で待ってちゃダメですか?」と、洋子お得意の上目づかいでおねだり。

「またこっちまで戻ってくるのが面倒じゃないか。すぐ戻るから待っててくれよ。大体篠崎が携帯を落とすのが悪いんだろう?」

「そもそも先生が手伝わせたのが悪いんです!」


 ぶすっと脹れっ面に成り下がった洋子だったが、次の瞬間表情がさっと変わった。

 困った、といった風だ。


「……わかりました! わかったから先生、早く戻ってきてくださいね! さぁさぁ!」

「お? おぉ、じゃあ行ってくるからな?」


 態度が一変した洋子にとまどいながらも、背中を押された先生はそのまま一人歩き出した。

 視聴覚室の前を通り過ぎ、右手に折れて姿が見えなくなる。


「ちょっ……なに? どうしたの洋子?」


 二人だけでは怖すぎるのに、どうして行かせてしまったのか。

 洋子は眉をハの字にして苦笑い。「やばい……きちゃったかも」


「え? 何が来たの?」

 思わず辺りを見回す私に、違う違うと洋子は笑った。


「生理よ、セ・イ・リ。そろそろかとは思ってたけど、このタイミングはさすがにヤバイよね」

「間違いなさそう?」

「うーん、確認してみなきゃなんとも……」