視聴覚室

 いつもニコニコと笑みを絶やさない先輩が、その言葉を聞いて突然真顔になった。目を見開いている。


「……え? 安原、視聴覚室に行くの? 今から?」

「あ、はい。でも江口先生とヨ……篠崎さんと一緒に行くつもりですけど――」

「ダメだ」


 きっぱりと。二の句が継げない勢いで制された。

 こんなに厳しい顔つきを見たのは初めてだ。

 鞄の肩紐を握っていた手のひらが、じわりと汗ばむ。


「……どういう、ことですか?」

「あそこ、開かずの教室って言われてるだろ。開かずの間をもじってさ。意味、知ってるよな」

「それは、物置にされててあまり使わないから、『開かずの教室』ってことじゃないんですか?」


 使用頻度が低いため、あまり開かない。誰も開けない教室。そんな感じ。

 えへへ、と軽く笑ってみせたけれど、先輩はいたって真剣なままだ。


「そんなお気楽な理由で付けられたネーミングじゃない。本来の言葉の意味通りだよ。禁忌なんだ」


 禁忌……?

 ごくりと唾を飲みこんだ。