視聴覚室

「そうだ! 先生、あそこ他の教室と違う場所にスイッチがあるんですか? 見つけれなかったんですけど」

「そうなのか? いや、すまんすまん。先生もそこまで知らなかったなぁ。さっき確認しとくべきだった。他の先生に聞いておくか」


 別に、もう二度と入る気はないですけどね。

 心の内で先生に毒つくのであった。







 外がとっぷりと暗くなった頃。時刻は午後八時過ぎ。

 部活が終わり、後片付けをしているところに洋子が青い顔をして近寄ってきた。


「どうしたの? 大丈夫?」

「……理香、どうしよう。私、携帯なくしちゃった……」

「え?」


 洋子の青い顔。どうしようと問う震える声。

 すぐに答えに辿り着いた。

 昼間、視聴覚室に行った時落としたのかもしれない。


「ほら、私椅子から飛び降りたでしょ? あの時胸ポケットから落ちたのかも……」


 落とした音がしたかどうか、記憶にはない。当たり前だ。私たちはあの時パニック状態だったのだから。


「どっちみち、鍵がないと視聴覚室には入れないよ? 明日にする?」

「それが……たぶん今夜、近藤君からメールがくるかもしれなくって……」


 近藤君とは、洋子の想い人だ。

 友達の紹介で知り合った他校生で、それが近頃うまくいっているらしい。

 順調にいけばハッピーエンドを迎えそうなのだ。

 そんな時に、メールを無視でもしたら亀裂が入ってしまうかもしれない、と洋子は主張した。