視聴覚室

 靴を脱いで椅子の上に立つと、洋子は背伸びをしてレールに手を伸ばした。

 私より若干背が高いので、必然的に洋子が買って出てくれたのだろう。


「わー、がんじがらめって感じ。これは取れないかも……ん?」

「どうしたの?」


 見上げた先にあった洋子の顔がこわばった。それを見て、私も背筋に悪寒が走る。


「……なに? どうしたのよ、洋子……」

「……これは……糸じゃない、かも。なんか、髪の毛っぽい……」



 言われて恐る恐る見上げれば、真っ黒な長い髪の毛がぐるぐるとレールに巻き付いているように見えて。



 はは、ははは……


 乾いた笑いはどちらからともなく口から漏れ出し、次の瞬間には洋子は椅子から飛び降りて私に抱きついていた。


「出よう出よう出よう! ここから出ようよー!」


 洋子が半泣きの状態でぶるぶると震えだす。私だって同意見だ。


「でも、どうしよう? 窓もカーテンも開けっ放しだよ!」

「後から江口先生が来るって言ってたし、とにかく先生が来るまで廊下で待とう! 私何だか怖くなってきたよー!」


 きゃーっ! と二人で叫びながら視聴覚室から飛び出した。

 やっぱり、ここには何かあるんだ。

 確証はないけれど、ここは危険だと自らの防衛反応が警鐘を鳴らしていた。