視聴覚室

 その時、シャッ! と軽い音が室内に響いて思わず肩が震えあがった。

 同時に、眩いほどの光が室内を照らす。洋子がカーテンを開けたのだ。


「なんか空気も淀んでるから、窓も開けて換気しよっか。よいしょ……と」


 ガラガラガラ。

 途端に、外の世界と繋がった。

 セミの鳴き声や、車の走行音。聞き慣れた音。味わい慣れた初夏の匂い。


 緊張がほぐれて、私は改めてカーテンレールを見た。

 洋子が次々とカーテンを開けているおかげで、何がひっかかっているのか容易にわかった。


「……糸?」


「理香? こっち全部開けたよー」


 言いながら洋子がこちらに歩み寄ってくる。

 私はぎこちなく笑うと、カーテンレールの上を指した。


「何かレールに糸が絡まってるみたい。開かなくって」

「どれどれー? あ、ほんとだ。ちょっと椅子持ってこようか」


 洋子が近場にあった椅子を引きずってくる。

 もうこれだけ室内に明かりがとれたなら、廊下側は別に開けなくてもいいような気がしてきたけれど。


「よい……しょ、と」


 洋子は事あるごとにかけ声を上げる。

 おばさん臭いとみんなから笑われるけど、それが本人にとっても心地いいようだった。