「えーっ?」


せっかくの至近距離。

どさくさに紛れてキスでもしちゃおうかと思ったのに…

肩を掴まれて、くるっと反転させられてしまった。


押しやられる先は…
今さっき、入って来たばかりのドアの外。


「ここで待ってちゃダメ?」


可愛くおねだりしてみたものの、


「ダメ。気が散る。」


スパッと一蹴されてしまった。

ちぇっ…。


「あとどれくらいで帰れる?」

「…1時間ちょい。」

「えーっ?私、何してればいいの?」

「勉強でもしてろ。嫌なら先に帰ってろ。」


……冷たいなぁ。

私に背を向けて、さっさと仕事の続きに取り掛かる龍ちゃん。


「………。」


私だって…

ちゃんとわかってるよ?


塾長、とは言っても、龍ちゃんは“臨時”。

前の塾長が突然入院することになって…

復職するまでの間、本社から派遣されただけ。


だから、慣れない仕事で苦労してるのはわかってる。

頑張ってるのもわかってるけど…



「もう少し、かまってほしいなぁ。」