「不倫じゃないよ！」


…いい加減、我慢できなくなってきた。

突然声を上げた私に、ヤマトはびっくりして言葉を失ったようだ。


今がチャンス。


「龍ちゃんは、そんな人じゃない。」

「“龍ちゃん”？」


聞くなり、怪訝そうに眉をひそめるヤマト。

構わず、続ける。


「聞いて？ヤマト。私と龍ちゃんは“不倫”じゃないの。５年前からちゃんと…」


“結婚してるの”そう言おうと思ったのに……


「……１人にしなきゃよかった」


続く言葉を待たずに、ヤマトはぽつりと呟いた。


「こんなことになるなら、あのとき、こっちに残ればよかったよ。」

「え…？」

「そしたら、俺が幸せにしてやれたのに…」


何…？

ひとりごとみたいに、俯いたまま呟いていたかと思うと…


「なんで、アイツなんだよ？」


ふいに顔を上げて、ヤマトは真剣な瞳で私を見つめてきた。


「不幸になるのがわかってるのに、なんであんなヤツを選ぶんだよ？」

「ヤマト…？」

「なんで……

俺じゃないんだよ？」