マミを見送ってから数時間。

僕は、もう店を閉めてもいいくらいの充実感で

でも、午後3時にもなると

次のお客がやってきた。

「沢田さん・・・いつもの感じで。」

若いうえに、この無愛想な男は月に2度ほどくるお客。

特別な接客前には必ずうちに寄ってくれてる。新宿では有名なホストクラブのホスト。

「ルイくん・・・今日もお疲れですか?」僕の冴えないメンズトークの開始は

ルイにはなぜか心地いいみたいで、僕を最終的には「沢田」と呼びつけにする。

「沢田・・・なんか今日はノリがいいな。」

さすがルイの推測は鋭かった。

「沢田・・・競馬とか?」

そうそう・・・メンズトークはいつも、ギャンブルのこと。勝ったとか負けたとか・・・

そして、ここ数か月


僕にかぎって、女の子の話は特にない。

話の随所で、僕は無意味に笑いが止まらない。

それをみたルイは、

タダならぬ僕の浮かれ具合を察知し。

「沢田・・・あんまり調子に乗んなよ。」

見事に出る釘を打たれた気分だったが

僕はマミに出会ったことが嬉しくって、はしゃぎたくって・・・

手元は順調に・・・


僕は今日もルイを最高のイケメンホストに仕上げていた。

「ルイくん・・・これでいい?」

「・・・・よし。

沢田・・・いつもありがと。」

ルイは髪が整うと、見ちがえるような態度で

僕に頭を下げ、店を後にする。

その後ろ姿は惚れ惚れするオーラを発していた。

いつかルイくんにもマミのことを話そう。僕はワクワクしながら

店を片づけるのだった。