嘘と微熱と甘い罠


例え本心だとしても、私なら言わない。

どんな事情があっても、そのつもりのない相手にそんなこと言わない。

ちょっと気が合って、仲のいい同期相手なら尚更言えない。

わざわざ居心地のいい空間を壊すことなんてしたくない。

それは、相良も同じだと思いたい。

…なんて。

こんな話、仕事の合間にする話じゃないもんね…。

フルフルと頭を降ると、無意識にまたため息が出た。

とりあえず。

相良の今夜の予定を聞いてみるか…。

私は小さくため息を吐くと。

ケータイのメール画面を操作し、相良にメールを送った。





【お疲れ。さっきはありがとね。ところで仕事終わった後、あいてる?ご飯でも行こうよ】





もうこれで引き返せない。

引き返すつもりもない。

どうなるにせよ、今までと全く変わらないってことはないんだ。

…気がつくと、窓の外は見慣れたビルが並んでいて。

私はケータイをバッグにしまうと、ビルの並ぶその一角でタクシーから降りた。