嘘と微熱と甘い罠


同じ職場だし、先輩だし。

これからも一緒に仕事をすること絶対あるから、と。

できるだけ穏便に終わらせようと思っていたのに。

…やっちゃったよ、あはは。

なんて。

そう思った時にはもう遅い。

言葉は私の中から飛び出してしまった。





ホントは罵って罵倒して、泣いて暴れてやりたかった。

でもそんなことしても笠原さんが結婚することも、騙されていたことも変わらない。

だからすべてを我慢して飲み込んで。

せめて仕事に支障のでないぐらいにはしておきたいって。

そう思っていたのに…。





“許してやるから”なんて、冗談でも言ってほしくなかった。

笠原さんは、私に対して。

少しでも“悪かった”って気持ちは…ないんですか…?





でも、大声を出したことで少しだけ冷静になれたらしく。

涙で揺れてた視界も、それ以上揺らぐことはなかった。

下を向き、溢れそうな涙を指先で拭うと。

私はまた顔をあげた。