嘘と微熱と甘い罠


胸元にまわされた笠原さんの腕。

背中に感じる笠原さんの体温。

必要以上に近づいた笠原さんとの距離に、心臓の動きが増していく。

少し前まで感じていたときめき混じりの甘いものじゃない。

ドクンドクンからバクバクと。

とにかくもう嫌な予感しかしなくて。

離れたい、ここから逃げなきゃ…っ!!

それだけを思って笠原さんに訴えた。





「は、離してくださいっ!!」

「俺にはまだ話があるんだよ」

「だから、私は…っ」





もう、話すことなんてない。

笠原さんとは終わりにしたい。

そう言葉を続けようとした時。

笠原さんが耳元で囁くように言葉を発した。





「お前、相良とやったよな?」

「え…?」

「俺がいるのに、相良とやった。それって浮気じゃねぇの?」





笠原さんの言葉は私をフリーズさせた。

な、んで…?

なんで、笠原さんがそのことを…。

あの日のことは誰にも言ってない。

言えるはずもなかった。

知っているとしたら、相良…だけ…。