嘘と微熱と甘い罠


「は…?」

「退けって言いました」

「何言って…」

「退けって言いました」





笠原さんの苛立ちを含んだ声に被せるように。

同じ言葉を2回、ため息混じりに吐いた相良。

その言葉を言い終わるが早いか。

相良は私の腕を引いた。

そして。





「最初からあんたにも…俺にも選択権なんてねぇんだ」





ボソッと呟くように吐いた相良の言葉は、私の耳にも届く。

ドクン、と心臓が大きく揺れたのがわかった。

…ねぇ、それって…どういう意味…?

そう相良に問おうとしたとき。

グイッと後ろ襟を引かれた。

その引かれた力に逆らえずに、私の体は後ろに傾いていくのがわかる。





「天沢っ!?」





私の腕を掴んでいた相良は力を入れてくれたけれど。

間に合わず。





「…捕まえた」





私の体は。

不適に笑みを浮かべる笠原さんの腕の中に落ちた。