な…んで、相良まで…?
私からすれば2人ともがなんでいるのかわからない。
ただわかるのは。
相良と笠原さん。
2人の空気が昨日までとは全く違うってことだ。
「自分の彼女迎えに来て何が悪いんだ」
「誰が誰の彼女?かなり調子のいいこと言ってるって自覚、あります?」
さっきまでとは違い、どこか余裕のなさそうな笠原さん。
対して敬語こそ使っているものの、ケンカ腰の相良。
…相良くん、笠原さんは仮にも先輩なんですよ?
そこ、わかってます?
…なんて。
冗談めいて言えたらどんなに楽だろう。
昨日の出来事はまだ鮮明で。
思い出すだけで背中にツツッとイヤな汗が走る。
そう、私は笠原さんと終わりにしたんだ。
こんな風に手を引かれている理由なんてない。
「…笠原さん、離してください」
相良が現れたせいか。
足を止め、力が緩んだ笠原さんの腕は楽にほどけた。
掴まれた感覚がなくなった腕はすごく軽く感じる。
私は掴まれていた腕を2、3回腕を振ると、笠原さんの方を向いた。