笠原さんが、どこに行くために私の腕を引いているのかわからない。
それに合わせて。
無表情な笠原さんの横顔が、さらに嫌な予感を増幅させる。
…ダメだ。
ついて行っちゃいけない。
頭の中で警報が鳴る。
掴まれた腕を振りほどくため。
私は笠原さんの腕ごと自分の腕を振り回した。
「笠原さ…っ、離し…っ!?」
「…なにしてんですか」
その時。
耳を通った声は聞き慣れたものであるはずなのに。
まるで別人のもの。
地を這うようなその声は、私の背筋にまたイヤな汗を走らせた。
「なんであんたがここにいるんです?」
「お前こそなんの用だ?」
一発触発。
どちらかが少しでも動けば何かが壊れてしまいそうな空気を。
笠原さんと、そして。
「こっちが聞いてんだから、答えんのは笠原さんの方でしょ?」
ゆっくりと近づいてくる相良の2人が作り出していた。