嘘と微熱と甘い罠


「…穂香っ!!」





落ちていくのはほんの一瞬だったはずなのに。

周りの景色はゆっくり流れた。

そして。





「…ッ!!」





背中や肩、体中に鈍い痛みを感じたところで。

私の意識は途切れた。

…最後の記憶は。

驚いて目を見開き、私の名前を呼んだ相良の声。

なぜか掴んでいた腕を離した笠原さんの…歪んだ顔だった。





こんなズルズルしてないで、もっと早く言葉にしなきゃいけなかった。

相良にも笠原さんにも、中途半端にしてるからこんなことになるんだ。

私の気持ちはもう、そこにしか向いていないのに…。





…笠原さん。

好きでした、もう過去形です。

私の中で笠原さんは…“仕事のできる先輩”でしかないんです。

もうこれ以上…幻滅させないでください。

…相良。

あのね、言いたいことが…あるん…だ…。





「…穂香っ!?」

「…ん…」





次に目を開いたときに視界に入ったのは。

白い天井と青白い蛍光灯だった。