嘘と微熱と甘い罠


対する相良の表情は私からは見えないけれど。

背中に感じる雰囲気的に、不機嫌MAXなのは間違いない。





「少なくともあんたのものじゃねぇってことだけは確かっすね」

「お前にそんなこと言える権利があるのかよ」





笠原さんの言葉に相良は「ハッ」と軽く笑いを含ませ反応すると。

笠原さんの真横に足を進め、笠原さんに掴まれていた私の腕を解いた。

そして、そのまま私の手を掴むと。

反対の手で笠原さんのネクタイをグイッと引き、自身と目線を合わせた。





「…その言葉、そっくりお返ししますよ」

「相良、てめぇ…」





深々と眉間によったシワ、何かを狩るような鋭い目。

相良を纏う空気は、怒りそのもので。

2人は何も言わずに睨み合っていた。

その空気に飲まれた私は。

声すら出すことができず、そこに立っていることしかできなかった。