嘘と微熱と甘い罠


今まで言い合いも数えきれないほどしてきたけれど。

こんな感情任せに声を荒げる相良を見るのは初めてだった。

相良は眉間にシワを寄せたまま、私と視線を合わせた。

相良の目は怒っている。

怒っているけど、傷ついたって目をしてる。

だけど…それは私も同じこと。

あの日私は他の誰でもない、相良に抱いて欲しかったんだ。

それがどういう意味かなんてわかってる。





「…誰のせいで泣いてると思ってるのよ」





ショックだったのは。

笠原さんに騙されていたことより、相良に嘘をつかれていたこと。

苦しかったのは。

笠原さんの浮気相手にされてたことよりも、相良に騙されていたこと。

私の涙のほとんどは…。





「相良のせいでしょ…っ!!」





瞬間、腕を掴んでいた相良の力が緩んだ。

その隙に、私は空いている方の手でドンッと相良の胸を押し返すと。

そのまま相良の顔を見ずに会議室を駆け出した。