嘘と微熱と甘い罠


痛いくらい力を入れ押し付けられた手首、近すぎる体温。

目の前にあるのは、眉間に深いシワを刻んだ相良の顔。





「なっ…にすんの、よ…っ!!」

「まだ笠原さん?」





重苦しい空気を切り裂いたのは。

微かに震えた私の声と、相良の怒りを含んだ低い声。

こんな状況なのに。

いきなり近くに感じた相良の匂いに、心臓が大きく跳ねた。

途端、身体は思い出す。

相良がベッドの上で纏っていた甘い空気を。

こんなタイミングで思い出させる相良はやっぱり狡い。

思い出したあの日の相良を払拭するように、私は首をブンブンと振り。

また相良に文句を言った。





「やめてよ!!離して!!」

「俺、あの日何度も確認したよな?もう戻れない、って」





掴まれている手首にギュッと力が入る。

その手と反対の空いている方の手で。

私を押し付けている無機質な壁を、相良は勢いよくドンッと叩いた。

そして、そのまま勢い任せに言葉を吐いた。





「笠原さんから離れらんねぇのに、俺に抱かれんなよ…っ!!」