嘘と微熱と甘い罠


ビ…ビックリした…。

相良に呼ばれて我に返った私は。

なるべく平静を装って服を正した。





「…コーヒー買ってくる。すぐ戻るからそこの資料目ぇ通しといて」

「あ…うん、わかった」





そう言った相良はさっきまでの“男”を感じさせる相良じゃなかった。

いつも通りの…仕事中の相良だった。

相良はちょっと眉間にシワを寄せ、ネクタイを締め直すと。

そのままミーティングルームを出ていった。





「…はぁぁぁぁぁ」





別に張りつめていたわけじゃないけれど。

この空間に自分一人になった解放感か、はたまた安堵感からなのか。

体の中心部からため息が出てきた。





笠原さんと…早く話をしなきゃいけないな…。

相良が私の気持ちを受け止めてくれるかどうかじゃない。

笠原さんとのことに早くけじめをつけないと。

自分がどんどん汚れていくように感じる。

笠原さんに求められながら相良のことを思い。

相良の動きに感じながら笠原さんのことを考える、なんて。

最低だ、私…。