嘘と微熱と甘い罠


「………………」

「………………」






何処から覗かれているんじゃないかって思うくらい。

そんな絶妙なタイミング。

ほんの数秒の気まずい沈黙の後。

もう一度ため息を吐いた相良は、思いっきり不機嫌な顔を見せ。

鳴り続けるプルプルプル、と空気を読めない軽い音に手を伸ばした。





「…はい、企画部ミーティングルームです」





…助かった、と言うべきなんだろうか…。

眉間のシワを深めながら応対する相良を横目に、乱れた服の胸元を直す。

視線を向ける私の胸元に散っているのは、赤い…紅い小さな痕。





その痕を見ていたら、ふと笠原さんとのことを思い出す。





笠原さんは。

私を抱いても、表面上その痕跡を残さない。

もちろん私にも残させない。

一度だけつきあい始めの頃に胸元に小さな痕を残したことがあった。

服を脱がなければわからないような場所。

それでも「大人として、社会人としてのマナーだろ?」と咎められた。

だから…残るのはいつも身体に残る感覚だけだった。