嘘と微熱と甘い罠


ホントのことなんて言えるわけない。

仕事以外のことでこんなに落ちてるなんて知られたくない。

でも、先輩に心配もかけられない。





「…目にゴミが入っちゃって」





ベタだけど。

これが今の私につける小さな嘘。





「大丈夫か?」

「大丈夫です」





中村さんが心配してくれてるのはわかる。

だけど。

ここは職場。

明日には大事な打ち合わせが入ってる。

凹むのは後でもできるから。





「…相良が、どうかしたんですか…?」





中村さんが私を見つけたとき。

「相良が…」とかなんとか聞こえたから。

…まぁ、戻りが遅い私にプチギレしてるってとこかな。





「あ、相良が探してる」

「やっぱり」

「おいっ、わかってるなら早く戻れよ!!」





呆れたような、イラついたような。

そんな顔を見せた中村さんは。

さっきより少し大きな声を出した。