嘘と微熱と甘い罠


不幸中の幸い、とでも言うのか。

着ているものが派手に乱れるようなことにまではなっていなかった。

とりあえず襟元を正すと。

とっても気まずい気分をため息と一緒に吐いた。





「なんで邪魔されたのに感謝するんだよ?」

「もう少し遅かったら、ここに来てたの俺じゃなかったから」





でも。

気まずいのは私だけみたいで。

相良と笠原さんはいつもと変わらない調子で話始める。





「…別の人?」

「総務部の水島さん。企画部まで笠原さんのこと探しに来てましたよ」

「え?水島が?」

「招待状がどうとか言ってましたけど」

「あー…」





相良の言葉に。

笠原さんの表情がちょっと歪んだ気がした。

それは、確証が持てないくらい。

気のせいだと思えてしまうくらいの小さな歪みだった。