嘘と微熱と甘い罠


“私は笠原さんとつきあってる”

それは事実なのに。

なんで言い聞かせるように頭に響くんだろう。

言い聞かせる必要なんてないじゃない。

でも、そうでもしないと。

また別のものが頭を占拠してしまいそう。

考えたくないのに。

頭に浮かんでくるのはあのことばかり。





「…天沢…」





耳元で囁かれる笠原さんの声はこの間とは違った。

“私が欲しい”と熱を含んで。

この後の流れを簡単に予想できるものだった。

流れを予想できるから、身体は素直に熱を欲する。

私は。

この熱が与えてくれるものを知っている。





「…お前は、誰のもの…?」

「ん、ぁっ…」





耳元に落とされる唇から発せられるリップ音と声が。

脳内に直接響く。






…誰のもの、なんて。

それは今、ここにある身体ですか?

それとも、目に見えない心ですか…?





心と身体は別物だ、なんて下世話な台詞が。

納得できた気がした。