嘘と微熱と甘い罠


「ちょっ、笠原さ…っ!!」





お店を出た後。

笠原さんは黙ったまま私の腕をひき。

路地裏へと足を進めた。

飲んでいたのも裏通り。

だから元々人通りはあまりない。

その奥まったところから、さらに古びた建物と建物の隙間に入り込む。

人の気配なんて全くない。





そこで始まった性急すぎる行為。

服の裾から入り込もうとする笠原さんの手を押し返す。

首をイヤイヤをするように動かすと。

首元に埋められた笠原さんの髪が頬を掠める。





「ここ、外…ッ」

「場所なんて、どこでもいいだろ…ッ…」

「こんな、とこじゃ…ッ…」





いや、違う。

場所の問題じゃない。

私はそれをわかっていた。





「笠原さん…変です、よ…ッ…」

「…………っ…」





笠原さんが呟いた言葉は。

今にも泣き出してしまうんじゃないかってくらい。

苦しそうに紡がれた名前だった。