嘘と微熱と甘い罠


「…あ…、仕事…詰まっちゃってるんで…」

「そっか。頑張れよ」





ぎこちない笑みしか見せられないことを。

仕事のせいにしてしまった。

それでも笠原さんは。

ポンポン、と私の頭に優しく手を乗せると。

カフェスペースに背を向け。

宣伝部の方へと足を進めた。





「……はぁ…」





そういえば。

笠原さん、なんかおかしかったような…。

気のせいかな…。

いやいや、そんなことより。

浮気した人って、こんなに苦しい思いをしてるんだね…。

一生知りたくなかった苦しみだわ…。

笠原さん、ホントにごめんなさい。

このことは。

墓場まで持っていきます…。





自分の後ろめたさが先立って。

笠原さんに感じた違和感の理由がわかるのは。

もう少し後になってからのことだった。