「行かないで。」

後ろから細い腕でマリアがしがみついた。


「どうしたの?
他に何かあった?」

ポンポンとマリアの腕を叩いた。


「私...咲也がいないと死んじゃう。」


「そんな勿体無いことすんな。
美人は長生きしなきゃ。」


白くて細い手首には、見たくない痕が薄っすらと残っていた。


「せめて...想い出が欲しい。」


「そんなのマリアらしくないよ。」


「愛さなくていいから...」


「あのさ、マリ...」


振り返ると同時に、言葉の先をマリアに奪われた。


「お願い、一度だけで良いからー」