酷い事をした俺に頭を下げる椿に折れてしまった。



「ありがとうございます」



「礼など要らぬ…」


俺は先に椅子を立って食間を出て行った。



「兄上」



気分が悪いと寝ていた清史と廊下で顔を合わせる。



「気分はどうだ?」



「大丈夫ですよ…」



「そうか…」




「椿さん…義姉上が来月…上演される帝国劇場の演劇『オペラ座の怪』を観たいそうです」



「演劇?お前にそんな事を話していたのか…」



「首の痣…兄上が付けたのですか?みんな…素知らぬ振りをしてるけど…僕や成宮さんたちもいるんだ…あまり刺激しない方がいいと思いますが…」



「…蒲柳の質(虚弱体質)の身だが男としての知識は立派だな…椿は俺の妻だと言う印だ…」


「野蛮人」


「褒め言葉としては頂くぞ。清史」