「矢野って言ったっけ?」
「お前のこと知ってるよ、転入生。」
「その呼び方やめて!転入生じゃない、青山君!」
2人の不穏な空気に割り込む勇気は無かったけど、さすがに「転入生」という言葉には反応してしまった。
「何?森屋さんと転入生付き合ってるの?2人とも意外と手早いね。」
「一緒にしないで、私たち付き合ってないから。」
「お前の頭には、そんなことしかないのかよ。」
半ば呆れたように青山君が言った。
「もし河西と別れるなら綺麗に別れてやれ。」
「綺麗にってなに?」
「河西を必要以上に傷つけるなってことだよ。それができないなら他の女を切れ。」
「俺は誰か1人に縛られたくないんだよ。」
「そんなの可哀相だよ。萌も阿久津さんも。」
「なんでつぼみが出てくるわけ?」
「なんで阿久津さんが怒ったか分からない?なんで萌がアンタとキスしたか分からないの?」
「キスなんて、ただの挨拶だよ。望まれればするし、それで相手が喜べばいいじゃん。」
つくづく最低な男だ。
熱く燃え上がる怒りを冷ますかのように、頬に当たる風たち。
「萌も阿久津さんも本当に矢野君が好きだからだよ!」
「・・・・。」
「保健室で聞いてて思ったの、本当に矢野君は阿久津さんが大切なんだって。」


