阿久津つぼみさんとは、去年同じクラスだった。
暗い印象はなく、大人しいけど友達の前では良く笑う人だった。
いつも本を読んでいて、図書委員を引き受けてくれる阿久津さん。
特別話す仲ではなかったけど、授業の資料探しのときはよく手伝ってくれた優しい人。
そんな阿久津さんが、まさか学年一関わりがなさそうな矢野君と一緒にいて、声を荒げているなんて去年の私なら想像できなかっただろう。
「なりゆき?」
「別に好きじゃねぇよ、多分あっちも。」
「最低。」
「・・・。」
最低、少なくとも萌は矢野君のこと好きだと思う。
「キスしたり、抱き合ったり、なんでそんな簡単にできるのよ。」
「簡単って、」
「なんで“キスしてやる”なんて簡単に言うの?あっくんにとって、私が簡単な女ってことだよね。」
「そんなことねぇって。」
「もう幼馴染みやめる・・・。」
そう言って阿久津さんは屋上を出て行ってしまった。
「おい、つぼみ!!!」
追いかけようとする矢野君の肩を引っ張ったのは私。
「ちょっといいかな?」
私の横では顔色ひとつ変えない青山君がいる。


