サチは、人形なんかじゃない。
まだ気づいていないだけかもしれないけど、ちゃんと自分の意志で考えて、未来を見据えてる。
BCMにいる、意志もなく、感情もなく。
ただ命令のままにしか動くことのできない人形なんかじゃない。
「それに?」
音兄が気になったみたいで続きを促すけど、私は笑ってなんでもないと言った。
「とりあえず、それだけは伝えたくて」
しばらく無言が続く。
私はテーブルにある冷めてしまったコーヒーに手を伸ばした。
かな兄と音兄にとって、BCMは敵だ。
でも私は言った、サチは敵じゃないと。
だから2人は私がサチに会うことについて考えているんだろう。
「……分かったよ」
「音!!お前、そのサチってやつ信用すんのかよっ」
「満月が大丈夫って言ってるんだから大丈夫だよ」
言葉に詰まるかな兄。それでもやっぱり納得はしていないみたいで。
口を開く前に音兄が先に言葉を発する。
「ただ1つ。僕たちもいっしょに行くからね」
これだけは譲れない、という強い意志を宿した瞳。
ズルいなぁ……私がその瞳に弱いの知ってるくせに。


