「……今日はそれ、持ってきたんだね」



音兄の視線は私の腰のあたりを見ていた。



「うん……一応ね」



いくらなんでも、BCMの人間相手に丸腰は危険。


だから保険のために持ってきたけど、できることなら使いたくはない。



「そろそろ行くぞ」



かな兄の一言で私は音兄の後ろに座り、そしてバイクはゆっくりと動き出した。










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「ついたよ」



ゆっくりとバイクが止まる。


お礼を言い、ヘルメットを音兄へ渡した。



「帰りもここで待ってるから」


「分かった」



このあたりの地形は頭の中に入ってる。


あと少し歩けば、緋連雀の倉庫が見えてくるはずだ。


冷えていく指先に力を入れて、私は一歩をかな兄たちに背を向けて歩き出した。



「満月!!」



名前を呼ばれて振り向くと、そこには心配そうな二人の顔が。



「無茶、するなよ」


「気をつけてね」



泣きそうにも見える、二人の顔。


私は二人の顔をしっかりと見つめて笑った。



「いってきます」