家に帰って軽くシャワーを浴びたあと、白猫の服に着替える。


そして、もう使うことはないだろうと思っていたモノを押し入れから取り出す。



「懐かしいな……」



部屋の電気に反射して、キラリと鈍く光るそれは二振りの剣。


と言っても長いものではなく、長さは30センチメートルぐらいで細身の軽いもの。



……BCMから逃げたときに腰にさしてたものだから、捨てようにも捨てられなかったんだよね。


売ろうにも捨てようにも、そこから情報がもれると大変だし。というかまず法律的にアウトだし。



「本当、前はどうしようか悩んだよ」



まさかまたこれを手に取るとは思わなかったな、と苦笑しながら二つの剣を左右の腰にさす。


そして帰る途中で寄った、手芸屋さんで買った長めの針をベルトにさしていく。


なんの変哲もない裁縫針。


こんなものでも立派に凶器になるのだから怖い。



腕、鈍ってないといいんだけど……


そんなことを考えながら、私は全ての針をさしていった。



夜の九時を過ぎた頃、玄関のチャイムが鳴る。


すぐにケータイが鳴り、私は玄関に向かった。



「よ、」


「かな兄……」



その姿は、少なくとも見た目はいつもと変わらない。


でも、内心ではきっとやりきれない思いでいっぱいなんだと思う。



「行くか」


「うん」



マンションを下りると音兄がバイクに乗って待っていた。