「でも一つだけ、満月には僕たちのお願いを聞いてほしいな」



目だけで私はその答えを促す。



「……そこまでの送り迎え、させて?」



そのお願いに目を見張る。


確かに地図の場所って少し遠いけど……でも、



「ダメだよ」



これから私は、もしかしたらあの二人に、その他の人にも会うかもしれない。


そんな危険な場所に大切な人を連れてなんて行けない。



「何も目の前まで連れてけってわけじゃない。その近くまででいいんだ」



私が何かを言う前にかな兄が口を開く。



「満月、お前が俺らを大切に思うぐらい、俺らも満月が大切なんだよ。これぐらいは、させてくれよ」


「でも、」



二人の顔を見てハッとする。



「もう……あのときみたいに、待ってるだけは嫌なんだよ……」


「かな兄……」



いつも明るい笑顔のかな兄はいなくて。


そこには辛そうに顔を歪めるかな兄がいた。



「今満月を一人で行かせたら、僕たちはきっと後悔する。あのときのように……」


「音兄……」



普段は優しく、温かく見守ってくれている瞳。


今は悲しみや寂しさ、後悔で染まっている。



「約束するよ。満月の戦いに絶対に手を出したりしない。覗いたりもしない。ただ、一緒に……途中まででもいいから、行かせてほしい」



真っ直ぐに二人に見つめられる。



……かな兄も音兄も、ズルいなぁ。


二人にこんなこと言われたら、いいよって言うしかないじゃん。



「分かったよ」



私がそう言うと、二人は泣きそうな顔で頷いた。