白猫の噂は出回っている。


それは族の間でも、きっとBCMの間でも。


dollも……サチも知っていたのだから、他の人が知っていてもおかしくない。



時間切れ、なのかな……


ぐっと唇を噛みしめる私を見て、かな兄と音兄は苦しげに目線を落とした。



「……多分、涼くんが調べても気づかなかったのは、この二人が入って一週間以内にはそこが潰されていたからだと思う」


「下っぱまでは手が回らねぇからな」



かな兄が忌々しそうに舌打ちをもらす。


音兄も渋い顔だ。



「緋連雀にも新入りが入ってる。三日前だね」


「……期間的にはそろそろだね」



スッと立ち上がって、テーブルの上に丁寧に置かれたウィッグに手を伸ばす。


髪をまとめて私はウィッグを被った。



「音兄……」


「はい、満月」



振り向くと、音兄の手の中には一枚の白い紙が。


受け取って中身を見ると、どこかの地図が書いてあって。



「緋連雀の倉庫の地図」


「……止められるかと思ってた」



クスリと笑うとかな兄が眉を下げて笑みを浮かべた。



「俺らが止めて、止まるような妹なら苦労しねぇよ」


「ふふっ、確かに」



さすがかな兄、私のことよく分かってる。