暗い建物の中に、何かを打(ぶ)つような鈍い音が何度も響く。


中を覗けばそこにあるのは人の山。


立っているのは二人の男だけだった。



「こーんなことして、本当に釣れるんスかぁ?」


「釣れる」


「その自信はいったいどこからくるんスかっ?!」



そう言いながらも、その相棒らしき人のことは信頼している様子が感じられた。



「次、行くぞ」


「はいはい、分かってるっスよ〜」



人の山には一切目を向けず扉に向かっていく二人。


その足を倒れている人が掴んだ。



「ま、てよ……」



その声は弱々しく、今にも消えてしまいそう。



「ありゃりゃ、意識保ってるやついたんスねぇ」



ひょい、と足を掴まれた片方の男はしゃがむ。



「な、んで、こんな、こと……っ」


「"なんで"、っスかぁ……」



うーん、と律儀に考えている男。



「ま、しいて言うなら人探しっスね」



軽く答えたその言葉に、倒れている男は驚愕に目を見張る。


ただの人探しのためにこんなことをしたのか、とその目は物語っていた。