その瞬間、右のわき腹に激痛が走る。
「……っ、」
一瞬、息が出来なくなるぐらいの痛み。
「やった…やったぞ……!俺は…!!」
意味不明なことを言って男はナイフを乱暴に引き抜く。
更なる痛みに体の力が抜けてしまった。
床に倒れると痛いだろうなぁ……
なんて呑気なことを考えられる辺り、私って意外と大物なのかもしれない。
ぎゅっと目を瞑るけど、予想に反して私の体は温かい温もりに包まれた。
「…っ、満月……!」
近くで聞こえる悲痛な声。
そっと目を開くと正面に太陽の顔があった。
「…たい…よ……?」
激痛で乱れる息の中、その名前を呼ぶ。
「早く、救急車呼んで!!蒼介、莉都、その男捕まえて!!」
遠くから涼の声が聞こえる。
「満月、今救急車くるから、しっかりしろよ!」
太陽が今にも泣きそうな顔で私を見る。
そんな顔をさせたかったわけじゃないのに……
「たい、よ……なか…な……で…?わた…し……は……だ…じょぶ……だ、から……」
苦痛に歪みそうになるのを抑えてぎこちなく笑みを浮かべる。
「太陽!満月ちゃんは!?」
「出血が多い。このままだと……」
あぁ……なんか寒くなってきたかも。
無意識に太陽の体にすり寄る。
「満月、おいっ、起きろ!!」
「満月ちゃん!?」
太陽の温かい温もりに包まれながら、私の意識は闇に落ちていった。