血のついた鉄パイプ……多分、こいつが朱雀を殴ったんだろう。
「卑怯者のくせに、朱雀を悪く言うのやめてくれない?」
「あぁ!?んだとこのやろっ…!!」
「やめろよ!!お前が殺られるぞ」
「っ…」
話を聞いてると、こいつらの上にいるのはよっぽど恐れられている。
そいつの目的は私。
「朱雀……」
頭から出る血は止まることなく溢れてくる。
このままじゃ出血が多くて危ない。
鮮やかに瞼の裏に浮かび上がるのは過去の情景。
赤に染まった姿と付随して思い出す人々。
偽善とでも、贔屓とでも言えばいい。
それでも私はもう……人が傷つくのは、見たくない。
「ねぇ。朱雀を見逃してくれない?そうしたら、私はあなたたちについていくわ」
鉄パイプ野郎、もとい金髪に向かって言う。
「っ、はぁ!?満月、何言っとんのや!!」
「こいつらの狙いは私でしょ?私がおとなしくついて行けば朱雀は助かる」
「そんなんあかん!」
「うるさいよ」
耳元で騒がれて私は眉をひそめる。
ただでさえ朱雀の声は大きいのに。
人の迷惑を考えてほしい。
「あなたたちにとっても悪くない取引だと思うけど?」
挑発するように私は微かに笑う。
こいつらの第一に優先しなければならないこと。
……それは私の捕獲。
私を逃がすぐらいならこの取引にも乗るはず。
「……いいだろう」
よかった……乗ってくれた。


