「送ってくれてありがと」


「どういたしまして。今日は楽しかった?」


「うん。久しぶりに音兄とかな兄と買い物できてよかった。また行こうね」


「じゃあ、約束」



そう言って音兄は右手の小指を出した。


あぁ、これも昔はいっぱいしたなぁ、と思い出してつい頬が弛む。



「うん、約束」



私も自分の小指を出して音兄の小指に絡めた。



「ついでにおやすみのキスでもしてく?」


「ふふ……それも懐かしいね。でも音兄はヘルメットしてるじゃん」


「じゃあ脱ごうか」



そう言って音兄はヘルメットをとった。


サラリと前髪が分けられるのがくすぐったくて小さく笑ってしまう。



「おやすみ、満月」



そっとおでこに音兄の温もりが落ちてくる。



「おやすみなさい」



私も音兄の頬に手を伸ばして、かがんでくれた音兄のおでこに軽く触れるキスを落とした。



「奏に自慢することが増えたな。じゃ、またね。海、楽しんで」


「うん、今日は本当にありがとね」



音兄の後ろ姿を見てから私も自分のマンションに入った。



最後まで視線は途切れなかったなぁ、と思い私は少し苦笑した。


自分の部屋に入りウィッグを外す。


軽くシャワーを浴びてから私はケータイをとった。