―――――――――――――――――
――――




懐かしい香り



この香りは、彼女の香りだ。



優しい香りと温もりは、忘れるはずがない。



私は彼女の腕の中に飛び込む。



優しい香りと温もりに包まれて、私と彼女は笑いあった。




後ろから名前を呼ばれて振り返る。



大きな手に私の手を伸ばすと、そっと私の小さな手をとってくれた。



白くて綺麗な指は、こうやって私と手を繋いでくれたり、私の頭を撫でてくれた。




全てが懐かしい。



私の、大切な思い出……










――――――――――――――――――
――――




「……朝?」



今日は不思議とスッキリと目が覚めた。


なんだか凄く懐かしい夢を見たような気がする。


どんなのだったんだろ……



考えても浮かばなさそうだったからとりあえずリビングに向かう。



蒼介は起きてるかな。



「……いない」



リビングには誰もいなくて、人がいた様子もなかった。



「まだ寝てるのかな」



時計を見ると九時前……昨日寝たの遅かったし。


多分、まだ寝てるね。


念のためにそっと覗いてみると、案の定気持ち良さそうに寝ていた。