「……音?」
『あぁ、ごめんね。いつも奏を従わせているのに今日は従順な満月がかわいくて』
「はっ!?」
つい大きな声を出してしまい慌てて太陽たちの方を見る。
……目があってしまった。太陽と。
他のみんなも大声を出した私を少し驚いたように見ていた。
『どうしたの?』
音兄の声がからかうような響きを持っていて自分がからかわれたんだと知る。
「……音の馬鹿。恥かいちゃったじゃん」
クスクスと笑う音兄の声に比例するように自分の頬が赤くなるのを感じた。
『ごめんごめん。でもこのくらいの意地悪は許してね。説明しなかった満月が悪いんだよ?』
「……分かってる」
『奏も悲しんでるよ?これじゃあ今日の仕事にならないから今から来てね』
かな兄…ちゃんと仕事してたんだ。
じゃなくてっ!
「私、今屋上にいるんだけど」
太陽たちに理由聞かれたら困るんじゃ……
『あぁ、大丈夫。放送で呼ぶから』
「ふーん……わかったよ。じゃあ後でね」
ぱたん、とケータイを閉じてついため息を洩らす。
これは……かな兄きっと面倒なことになってるんだろうな。
それが簡単に想像できてしまうあたりが怖い。
言わなかった私が悪いとはいえ、どう宥めよう……?


