「消えぇや」
朱雀が睨み付けながらそう言うと、上にいた人たちは泣きそうな顔をしてどこかへ行った。
「あの……ありがとうございました」
朱雀の腕から離れて、立ち上がってからぺこりとお辞儀する。
「ん?あぁ、あんなん別にえーよ。それより、大丈夫か?」
「え?あぁ、たいしたことないですから」
「そか」
朱雀の手が伸びてきて私の頬をなぞる。
不思議と不快な感じはなかった。
「ちょっと赤いな。ま、キミがそう言うんなら大丈夫やな」
そう言って朱雀は手をおろした。
「それにしても、またキミに会えて嬉しいわ」
膝辺りの埃を落としながら朱雀は立ち上がる。
ニコニコ笑っている朱雀は何だかご機嫌に見える。
……あれ、なんか嫌な予感がする。
「な、猫ちゃん?」
その予感を当てるかのように、悪戯っぽい光を目に浮かべながら、朱雀は私の目を覗きこんできた。
ばれてる………
いつかはばれるとは思っていたけど、こんなに早いとは。
「えっと、猫って……?」
わざと困惑したような顔をする。
笑顔にプラスして小首も傾げてみた。
これで誤魔化せないかな、とちょっと期待。
「そんなんしてもムダやで。猫ちゃん」
はい。無理でした。
これは……もう諦めるしかないな。
下手に言いふらされても困るし。
まぁ、朱雀なら大丈夫かな。勘だけど。
「……何で分かったの?」
見た目とか白猫のときと全然違うのに、と無言で伝える。


