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「強かったね、白猫さん」


「……あぁ」



鬼火に捕らわれた朱雀を助けに来て、偶然、あの"白猫"と会った。


前から聞いてはいたが、最近は暴走族に関係のある者なら知らない奴はいないんじゃないかってくらい有名になった名前。


月明かりに照された姿は美しく、気高い猫のようで、誰よりも強いと噂の白猫。


他にもいろいろな噂はあるが……



「本当に、女だっのか…」



ぽつりとこぼした独り言は誰にも聞こえなかった。


それにしても、と太陽は考える。


あのとき、一瞬月明かりに照された顔。


どこかで見たような……



「太陽?どうしたの?そんな難しそうな顔して」



隣にいる涼に言われ、自分が思っていたよりも白猫のことを考えていたのに気づく。



「いや、何でもない」


「そう?…あんまり白猫さんについては深く考えない方がいいんじゃないかな」



涼らしからぬ言葉に少し驚く。



「ほら、彼女気まぐれで朱雀を助けてくれたって言っていたし、悪い人には見えなかったからね」



まぁ、勘ってところもあるけどね、と言ってふわりと笑う。


確かに……悪い奴には見えなかったか。



「涼くーん!」



少し離れたところにいた莉都たちが涼に手招きしている。


朱雀を指差しているところを見ると、おおかた朱雀を動かす手伝いをしてほしいというところだろう。


蒼介はともかく、莉都は伸長が小さいからな。



「仕方ないか」



苦笑しながら涼は莉都たちの方に行く。






やっぱり、全員いる方がしっくりくるな……



笑いあう涼たちを見て、そう思いながら俺もみんなの方へ足を踏み出した。