「いやぁ〜…ワシ怪我人やからなぁ」
「薄情者」
答えながらこの状況をどうしようか考える。
殴られないかつ、一番安全なのはあれだけど……さすがに気が進まない。
だって蒼介って悪い人じゃないし。
となると、
「歯、食いしばれよ?」
殴る準備ができた蒼介は親切にも殴るときを教えてくれた。
「これは使いたくなかったけど……」
今思いつく中では一番良い、かな。
「は?何言ってんだ?」
「こっちの話」
「?…まぁいい。覚悟しろっ」
「それは無理」
向かってくる拳にひやり、としながら拳がくる前にビリッ、と着ていたマントを破く。
「はぁっ!?」
驚いた蒼介の拳のスピードが少し鈍る。
そのうちに破ったマントを目隠し替わりに蒼介に被せた…と言うか投げつけた。
「うぉっ!?」
スカッ、と拳の軌道が逸れて私の頬をかすった。
「……っ」
顔面に当たらなかっただけよかったと思おう。
「この…っ!!」
蒼介がマントをとるのと同時にふわり、と私は床を蹴り、近くに積んであった荷物の上に着地する。
「それじゃ、私は帰るね」
「くそ……逃げんのかよっ」
それには答えずに私は入ってきた窓のある場所までまた飛ぶ。
「待ちやがれ!」
「マントはそのまま捨ててくれればいいから」
「聞いてんのかよ!?」
その台詞、さっきの蒼介に言いたいよ。